「もつれる水滴」レビュー(東京芸術劇場)布の装置と映像によるダンスアート

2022 / 05 / 06

布の装置と映像による身体パフォーマンスアート作品。

布の装置では、
天井からの4本の紐が、引っ張ると互いに短くなったり長くなったりするようになっている。
それを布の四隅にくくりつけ、ダンサーが引っ張ると動くというシステムのようだ。
また、紐の動きを滑らかにするための滑車には、マイクも取り付けられており、
運動、音が連動するようになっている。

総合的に振り返ると、人間のコントロールが及ばない自然の動きがあり、
それと対話、格闘としている人間というように見えた。

動きが徐々に荒々しくなっていき、音の激しさも相まって、
自然への畏怖を感じさる。
また、宙に浮かんだ布も、風という自然を感じさせる。


舞台が始まると、男性が入ってくる。
四隅の紐に、順番に腕を通していき、この装置が動くことを説明してくれている導入のようだ。
男性のお腹はぷっくり膨らんでおり、
どうやら布が仕込まれているよう。
この布の四隅に、連動して動く紐をくくりつけていく。

初めは、ゆっくり布が宙に動くような動きを見せ、それが右左上下と動きに激しさが増していく。
最終的には、男性がグルグルと布を振り回し、布が巻き上がって細くなってしまう。ここが一つの盛り上がりだろう。

その後、細く巻き上がった布は宙に浮かび、男性が反対方向に回すような力を紐に加えると、
魔法がかかったかのように、瞬時に布が広がる。この驚きも非常にハイライトとして脳に記憶されている。

その後、舞台中央から別の向こう側が透けて見える布が降りてきた。
ここには、部屋の映像が映し出された。
興味深いのは、前と後ろで使い分けて映像が映し出されていたことだ。

男性が前のプロジェクターに塞がると、男性の体に体の中身の内臓が映し出されたりもした。
これも印象的なシーンの一つだろう。

その後は、短いコンタクトのダンスを行われ、
全ての演目を党して重力に対するテーマを感じさせられた。
空間アートの要素が多い公演であったが、

これらに対してのダンサーの想いが見えるような感情的な肉体のシーンも見てみたいなとも感じるし、
また、逆にダンスとは、を考えさせられる時間にもなった。

ダンスは、何かを説明する力はあまり求められていないが、
見えているものが、身体の運動によって変化していく、
この”変化”が説明の代わりになって、
物語が紡がれているように思う。