ダンス創作表現としての文脈の設定「外枠の文脈」と「内枠の文脈」
香瑠鼓さんが定期開催しているステージ「ラボフェス」を観てきた。踊りを専門にしていない人も参加できる“表現の場“だ。
最近は聞かなくなったが、“いい大人になって、、、“とネガティブワードがある。まさにその“いい大人”たちが真剣に踊りを構築し即興ているから、面白い。自分に向き合い、他者と向き合い、社会と向き合い、自分の体と対話している。様々な気づきがあった。
その一つに、文脈の設定がある。私は踊れて“しまう“身体を持っているが故に、この何に突き動かされて人は踊るのかにとても興味がある。
この文脈には「外枠の文脈」と「内枠の文脈」があるように思えた。
外枠の文脈は、そもそも何かのための表現であるように思う。
内枠の文脈は、内容としてのストーリーで踊っていく。
“いい大人“が設定した、「外枠の文脈」「内側の文脈」とても勉強になった。
▶︎ラボフェスライブ配信動画
https://fb.watch/lxc030XAG9/
文脈についてもう少し考察してみよう。
そもそもこの文脈には、二つの目的があるように思う。
①自分の感情にスイッチを押す
②観ている人と、場を共有する
この二つがクリアされると素晴らしいパフォーマンスの第一歩であるように思えた。
では、具体的に、「外枠の文脈」を考えてみよう。
上記イベントのラボフェス内では、
「あなたの悩みを解決します」というパフォーマンスがあった。
この一言が外枠の文脈を設定したように思う。
パフォーマンス内では、実際に、その場で何も打ち合わせなしに観客に悩みを聞き、それを解決しようとパフォーマンスをする。
この時、起きたことで私が感じたことは、
②観ている人と場の共有をしていることは明白であった。
パフォーマーが何をしていてもそれが、悩みを解決するために向かっている何かの作業、儀式、工程に思えた。そして、実際にパフォーマーも即興で、今解決を身体的に見つけていくので必死であるから間違い無いだろう。
この必死な様子が生き様であり、紛れもなく①自分の感情にスイッチを押していた。
次に、「内枠の文脈」を考えてみる。
上記イベントのラボフェス内では、
バルタン星人がキャラクターのソロパフォーマンスがあった。
「内枠の設定」として、バルタン星人が力が強すぎるが故に、全てを壊してしまうため平和主義であるというのである。
これが内容に色鮮やかに落とし込まれている。
内容として、バルタン星人の家族喧嘩が勃発しようとしている説明と動き、そして、ちゃぶ台を返す(=平和主義)として描かれていて、面白かった。
ここには、二つの色鮮やかな演出的テクニックが隠されていた。
❶“空間的“演出のアプローチ=ちゃぶ台をひっくり返すモチーフを使うことで空間が豊かになっていた
❷家族喧嘩を表現する際に、セリフが続く中に、その意味(ここでは、家族の役柄、母や娘を演じる)がある“象徴的“な動きの繰り返しがあった。
内容を観客と(セリフによって)共有しながら、空間演出もあり、動きもあり、内枠の文脈設定がうまくいっていた。
その後のバルタン星人は、ガチョーンを用いたボクシングのシーンに移り、これには相手の邪気を吸い取る力がある(内枠の設定:平和主義)という。このガチョーンを他の誰かにやらせて一緒に楽しむシーンがあった。
これも彩り豊かにする演出の一つに思う。
❸他者に(無茶振りを共有した上で)参加してもらう
このような「外枠の文脈」「内枠の文脈」をラボフェスを観て、創作表現に関する気づきを得た。
内枠の文脈について、もう一つ例を挙げる。
それは、女性三人のストーリーである。
大きなメッセージとしては、「夢は叶う、諦めず扉を開こう」と感じた。
ここでの内枠の文脈としては、その三人のストーリーが伝わることにあるのだが、その構造が即興ならではで、素晴らしかった。
それは、一人一人が内枠の文脈(自分のテーマや環境設定、状況、キャラクター)を立ち上げ、そこに他者が登場することを前提に、文脈をアップデートし、他者との関わりを持ったというところにある。
簡単にいうと、自分の世界の中に、違う主人公が関わってくる群像劇的なことである。この関わりに強い関係があるものもあれば、テーマや設定に大きくは関わってこないものもあり、それぞれである。特に大きくコアメッセージに関わったのが、お弁当のくだりである。
お弁当を毎日作っている女性は、疲れ切っているが、ある日、それを購入し公園で食べる女性の「美味しかった。今日も頑張ろう」という言葉に出会う。毎日、働く女性が自分も社会の一部であり、人のためになっていると実感する些細なシーンだが、これが生きる喜びであり、それはふと通り過ぎてしまいそうなものだということも思い出させてくれる。
女性はその喜びと、今までの暗さを開放するように踊り、感動を与えた。
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